葬儀式にみる不易流行と死後の安心(あんじん)
2010年2月25日(木)
去る2月25日、仏教情報センター主催の「ホスピスの会」で、当山の副住職が出仕、「葬儀式にみる不易流行と死後の安心(あんじん)」と題して、講師をつとめました。
町屋駅に程近い臨済宗泊船軒というお寺で、NPO法人ライフデザイン研究所の副理事長の佐々木悦子先生とともに、約一時間、お話しさせていただいたのは、以下のような内容です。
■客観的視点-現代葬儀事情にみる不易と流行-
1、流行の面・・・葬儀の簡素化傾向
①枕経(=納棺の際に枕元で経を読むことをいう。本来は菩提寺の僧侶が夜を徹して読むものであったが、民間では臨終直後に居合わせた近親だけで般若心経等を読むまでに簡略化されることもまれでない。死の直後の死者の霊魂はきわめて不安定なため、成仏を促しかつ死体に悪霊がつくなどの異状がないように、枕元に灯明をともし、刃物を置き、さらに枕飯・枕団子、枕石などを供える。〈『岩波仏教辞典』第二版より〉)の減少
⇒安心<面倒・・・僧俗に共通する意識。実際の需要に即応した現象。
②繰り上げ初七日・四十九日と式中初七日の普及
⇒地域性・物理的事情・・・気候(北海道では式中百箇日も)、火葬場の立地、葬祭場の普及(=自宅葬の減少)他
③家族葬・密葬~直葬の増加
⇒二極化傾向(不可避的な選択vs主体的な選択)
(イ)不可避的選択・・・経済的な問題
(ロ)主体的な選択・・・供養・安心という概念そのものの欠如。
社会問題=家族観(形態)の変容・希薄な人間関係。
2、不易の面・・・心のケアの重要性
①直葬に対する僧俗の本音
⇒僧俗間のギャップ
(イ)多くの方が可能ならば供養(=葬儀法要)をしたいという気持ちをもっている。
(ロ)直葬はNGという寺院もある→伝統的な葬儀式継承という建前
(と隠された本音¬¬=お布施の問題)
⇒葬儀式執行の根本義=死後の安心・遺族にとっての区切りとしたら・・・→直葬の相場とされる金額での葬儀式執行は不可能か?
■僧侶としての対応
1、儀式の簡略化を不可避的に受容・・・葬儀社主導の懸念
⇒直葬の増加にとまどいと自省
2、法儀式・読経プログラムの工夫
⇒法要の短縮・経典の省略
⇒書き下し経典の読誦(実演)・・・読誦内容の伝達←本質的ニーズか?
■主観的視点 -これまでの経験を踏まえて-
葬儀を依頼する側からの視点として、、佐々木副理事長が豊富な具体例をあげて、昨今の葬儀式の変化について説明。
他方、僧侶の視点としては、「法儀式・読経プログラムの工夫」のなかで、「六根段」というお経の一部を、いわゆる通常の漢文素読バージョンと、意訳した書き下しバージョンとをそれぞれ実際に読誦するなど、葬儀現場の生の声をお伝えしました。
今後、同様の企画をたとえば施餓鬼会の前や彼岸の時期に実施し、実際に観音寺のお檀家さんのみなさんにも聞いていただきたいとも考えております。
後日、当日の講演テープ、記事が出来ましたら、またお知らせいたします。